Jean Touret

Jean Touret

ジャン・トゥレット

1916 - 2004

フランス・ラセ=レ=シャトー生まれ。

ジャン・トゥレットは、フランス・ラセ=レ=シャトーに生まれた芸術家・デザイナーです。彼の思想的背景には、1930年代の激動の時代状況が強く影響しています。この時代は、民主主義・共産主義・ファシズムといった政治的イデオロギーが拮抗し、ヨーロッパではシュルレアリスムが広がりを見せる一方、アメリカでは世界恐慌を背景に、貧困や労働問題といった社会的主題が芸術の中心となっていきました。こうした状況は、芸術と社会の関係性を問い直す契機となり、トゥレットの価値観にも影響を与えています。

パリの国立美術学校エコール・デ・ボザール(École des Beaux-Arts)で学んだ後、第二次世界大戦中に捕虜となったトゥレットは、南ドイツの森林地帯に送られ、木こりとしての労働を強いられます。この経験を通して、彼は農民の素朴な生活や木工という原初的な技術に触れ、後の制作の基盤となる自然観と素材への意識を獲得しました。戦後フランスに戻った彼は、新たな人生観のもとパリを離れ、画家モーリス・ロシェを頼りにブロワ近郊の村マロルへ移住します。そこで大工エミール・ルロワと出会い、さらに鍛冶屋アンリ・ヴィオン、籠職人エドモン・ル・フロヒック、陶芸家マニュエル・ゴールドらと協働し、工芸協同組合「Atelier de Marolles」を設立しました。この集団は、木や金属といった自然素材を用い、職人の技術を横断的に結集することで、従来の様式に依存しない新たな家具や装飾のあり方を提示しました。その造形は簡素でありながら力強く、ミニマルな表現の中に素材の存在感を際立たせるものです。

トゥレットが志向したのは、工業化によって均質化された家具への批判であり、伝統的な手仕事の価値を再評価することでした。彼の試みは、素朴な家具の原型を保ちながらも、現代的で洗練された美学へと昇華する点において独自性を持っています。1964年、トゥレットは「Atelier de Marolles」の芸術監督を退き、以降は絵画制作に専念します。同組織は1970年頃に解散しました。その後は息子セバスチャン・トゥレットとともに、教会や礼拝堂の空間構成や装飾(彫像、祭壇、幕板など)を多数手がけています。

彼の制作に一貫する思想は、物質の中に生命を見出すことにあります。過度な装飾を排しながらも、静かで力強い存在感を空間に与えるその表現は、ブルータリズム的な手法と共鳴しつつ、極めて抑制された精緻な美学として結実しています。

今日、彼らの家具や造形は、単なる民芸や装飾を超え、モダンインテリアの文脈において再評価されています。

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