

バラウナ工房(Marcenaria Baraúna)は、建築デザイン分野で活躍していたフランシスコ・ファヌッチ、マルセロ・フェハス、マルセロ・スズキによって、1986年にブラジル・サンパウロで設立されました。
彼らは1970年代半ばにFAU-USP(サンパウロ大学建築都市計画学部)で出会いました。機能主義的なデザインアプローチを学びながら、軍事独裁政権下の不安定な社会情勢と抑圧の影響を受けつつ、建築の道を歩み始めました。その後、1978年にマルセロ・フェハスとマルセロ・スズキが小さな建築事務所を設立。設立後まもなくフランシスコ・ファヌッチが加わり、建築事務所「ブラジル・アーキテトゥーラ」として正式に稼働するようになりました。
バラウナ工房の設立において重要な転機となったのが、建築家リナ・ボ・バルディとの出会いでした。1977年、フェハスは「SESCポンペイア文化センター」プロジェクトに参加し、リナと共に建築と家具を並行してデザイン・製作する経験を積みました。しかし、リナは当時の職人の技術に満足しておらず、建築の価値を守るためにも家具製作の質を高める必要があると考えていました。実際に彼女自身も、1940年代にスタジオ・デ・パルマとマルセナリア・パウ・ブラジルを経営していた際に、工業デザインの方向性に疑問を抱き、職人技を生かしたものづくりを模索していました。こうした背景のもと、建築と家具の関係をより深く追求する必要性が高まり、彼らの建築思想と職人技を融合させる新たな挑戦として、バラウナ工房の設立が構想されました。
1986年、「SESCポンペイア」のプロジェクト終了とともに、彼らは建築と一体化した家具デザインを追求するため、職人アデリーノ・ルビオを迎え入れ、バラウナ工房を創設しました。工房の名前は、ブラジル北東部で最も硬い木の一つである「バラウナ」に由来し、その丈夫さと耐久性を象徴しています。
バラウナ工房の家具デザインは、建築的アプローチが特徴です。形状、構造、素材の論理的な関係を重視し、職人の手作業による精巧な製作が行われています。代表作には、リナ・ボ・バルディとフェハス、スズキが共同でデザインした「ジラファチェア」や折りたたみ構造を持つ「フレイ・エジディオチェア」などがあり、これらの作品はニューヨーク近代美術館(MoMA)にも収蔵されています。
1994年にマルセロ・スズキが退社した後も、フランシスコ・ファヌッチとマルセロ・フェハスがアドバイザーとして工房を支え、職人による手作業を大切にしながら家具製作が続けられています。さらに近年では、リナ・ボ・バルディの復刻プロジェクトにも力を注ぎ、彼女の建築理念を反映した家具の再生に積極的に取り組んでいます。
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