Martin Eisler

1913年、オーストリアで生まれたマーティン・アイスラーは、1936年に建築の学位を取得しました。しかし、第二次世界大戦の影響により、チェコスロバキア、次いでアルゼンチンへと移住を余儀なくされます。アルゼンチンでは建築家やインテリアデザイナーとして活動を開始し、後に「Interieur Forma」となるインテリアデザイン事務所を設立。1950年代初頭にはブラジルに移住し、そこで新たなキャリアを切り開きました。

1927年、イタリアのブレシアに生まれたカルロ・ハウナーは、ミラノのブレラ美術学院で製図とデッサンを学びました。1948年にはヴェネツィア・ビエンナーレに参加し成功を収め、その後ブラジルに渡ります。ブラジルでは、テキスタイル、陶磁器、家具、建築のデザインに専念し、才能を発揮しました。

1953年、サンパウロでハウナーとアイスラーが出会います。二人は家具製作のビジョンを共有し、ハウナーの義兄エルネスト・ウルフの支援を受けて家具製作会社を設立。サンパウロにあるリナ・ボ・バルディとその夫が所有していた工場を買い取り、「Móvies Artesanal」（職人技の家具）と改名しました。その後、会社は「Forma」に改名し、ブラジルのモダン家具メーカーとして大きな成功を収めます。

Forma社は、ブラジル産の木材と細い筒状の金属フレームを用いたエレガントなデザインで知られ、「コンチャ／ハイア・チェア」（英語名：シェルチェア）や「コステラ」などの代表作を生み出しました。また、1959年にはKnoll社の家具の独占販売権を獲得し、ミース・ファン・デル・ローエやチャールズ・イームズなどの著名デザイナーの作品をブラジル市場に導入することに成功しました。

1958年、カルロ・ハウナーはイタリア人の妻に勧められ、イタリアに戻ります。そこで「Forma di Brescia」を設立し、ローマやバチカン市国のブラジル大使館などを顧客に持ちました。一方、アイスラーはブラジルに残り、建築やデザインを続けました。その後、ハウナーは会社を売却し、シチリア島の小島サリーナで絵画とワイン造りに専念しましたが、1997年に他界しました。

Forma社は1960年代から70年代にかけて最盛期を迎え、ブラジルのモダンデザイン運動を象徴する存在となりました。アイスラーがアルゼンチンで創設した「Interieur Forma」は現在も存続しており、彼のデザインへの貢献が続いています。