剣持勇 : Carpet Collection for Keio-Plaza Hotel, 1971

剣持勇(1912–1971)は、戦後日本のインテリアデザインを代表する存在です。民藝や工芸への深い理解を背景に、現代デザインの理念を生活文化の中へ取り込み、素材の特性を生かした数多くの名作を生み出しました。「ラタンチェア(1960)」や「柏戸イス(1961)」は、その代表例として世界的に認知されていますが、日本国内では家具にとどまらず、ヤクルトやジョアの容器デザインを手がけたことでも広く知られています。
1955年に剣持自身が立ち上げたデザイン事務所「剣持デザイン研究所(KDA)」は、剣持没後もその理念を継承し、図面・スケッチ・資料の保存・管理に加え、ホテルから公共施設に至るまで多様な設計案件に携わってきました。「生活の質を高めるデザイン」という剣持の思想は、現在も同研究所の根幹として生き続けています。
1955年に剣持自身が立ち上げたデザイン事務所「剣持デザイン研究所(KDA)」は、剣持没後もその理念を継承し、図面・スケッチ・資料の保存・管理に加え、ホテルから公共施設に至るまで多様な設計案件に携わってきました。「生活の質を高めるデザイン」という剣持の思想は、現在も同研究所の根幹として生き続けています。

1971年に開業した京王プラザホテルは、当時まだ高層建築が少なかった新宿西口に、新宿新都心第1号の超高層ホテルとして建設されました。設計は日本設計が担当、その主要なインテリアデザインを担ったのが剣持勇です。ロビー、ラウンジ、レストランに至るまで、大空間における視覚的な調和と現代性が重視され、建築と密接に呼応するデザインが随所に施されました。
その中で、私たちが注目したのが、主要空間に敷設されたカーペット群でした。剣持は幾何学的な構成、素材感、色調を精緻に組み合わせ、それぞれの空間に手工芸ならではの奥行きと豊かさを与えました。制作を担ったのは山形のオリエンタルカーペット社で、剣持は同社の高い技術力を信頼し、織り、色、厚みまで詳細に検討しながら制作を進めました。
その中で、私たちが注目したのが、主要空間に敷設されたカーペット群でした。剣持は幾何学的な構成、素材感、色調を精緻に組み合わせ、それぞれの空間に手工芸ならではの奥行きと豊かさを与えました。制作を担ったのは山形のオリエンタルカーペット社で、剣持は同社の高い技術力を信頼し、織り、色、厚みまで詳細に検討しながら制作を進めました。

現時点で、オリエンタルカーペット社が製作した記録が確認できている作品は、大きく4つのシリーズです。いずれも、同社の手工芸による高度な技術と、剣持の創造性が結びついた、当時の京王プラザホテルを象徴する重要なデザインでした。
私たちは復刻に着手するにあたり、当時の写真をもとにオリエンタルカーペット社へ調査と復刻の打診を行いました。その結果、山形県山辺町の本社資料庫に、当時の製作図面や色番が保管されていることが判明。当時を知るスタッフはごくわずかでしたが、現在でも卓越した技術力を継承する職人たちが在籍しており、図面や色番、竣工写真を照合しながら丁寧に復刻制作を進めてくださいました。剣持デザイン研究所のご協力も得て、正式な復刻プロジェクトとして立ち上がりました。
1971年に他界した剣持にとって、本作品群は遺作とも呼べる位置付けにあり、剣持自身の類まれな創造性と、昭和から今日まで脈々と受け継がれてきた日本の手工芸の確かな技術力が、あますところなく体現されています。
私たちは復刻に着手するにあたり、当時の写真をもとにオリエンタルカーペット社へ調査と復刻の打診を行いました。その結果、山形県山辺町の本社資料庫に、当時の製作図面や色番が保管されていることが判明。当時を知るスタッフはごくわずかでしたが、現在でも卓越した技術力を継承する職人たちが在籍しており、図面や色番、竣工写真を照合しながら丁寧に復刻制作を進めてくださいました。剣持デザイン研究所のご協力も得て、正式な復刻プロジェクトとして立ち上がりました。
1971年に他界した剣持にとって、本作品群は遺作とも呼べる位置付けにあり、剣持自身の類まれな創造性と、昭和から今日まで脈々と受け継がれてきた日本の手工芸の確かな技術力が、あますところなく体現されています。

写真左 : Rectangle Carpet[KENMOCHI-C](1971)
プレジデンシャルルームのためにデザインされたモデルです。複数の糸色を細かく組み合わせることで、光の当たり方に応じて微細に表情が変化する柔らかなグラデーションを生み出しています。落ち着いた色調と織りの深みが特徴で、一見すると単色に見える部分にも複数の色が織り交ぜられており、細部への徹底したこだわりが感じられます。
写真中央 : Square Carpet[KENMOCHI-A](1971)
12枚のパネル状のカーペットを3×4で組み合わせ、一つの大きな模様を構成するモデルです。エントランスロビーでは剣持デザインの家具とともにレイアウトされ、当時の京王プラザホテルを象徴する空間をつくり上げました。部分によってパイルの仕上げと毛長が異なり、シャギー、ループ、カットなど複数の技法が使い分けられています。剣持の豊かなクリエイティビティと、それを確かな技術で実現したオリエンタルカーペットの熟練した職人技が結実した作品です。
写真右 : Round Carpet[KENMOCHI-B](1971)
直径6mの円形カーペットとしてロビーの中心に設置され、来客の動線をやわらかく整える役割を果たしていました。象徴性が高く、ホテルのアイコンとして知られています。復刻版は現代の居住空間に合わせ、直径3mサイズとして展開。円形という形状は、「空間を分断せず、自然な流れを生むデザイン」という剣持の理念を体現したもので、ホテルの公共空間を、人が自然に居心地よく過ごせる場とした剣持の思想が、最もシンプルな形で表現された一枚といえます。
プレジデンシャルルームのためにデザインされたモデルです。複数の糸色を細かく組み合わせることで、光の当たり方に応じて微細に表情が変化する柔らかなグラデーションを生み出しています。落ち着いた色調と織りの深みが特徴で、一見すると単色に見える部分にも複数の色が織り交ぜられており、細部への徹底したこだわりが感じられます。
写真中央 : Square Carpet[KENMOCHI-A](1971)
12枚のパネル状のカーペットを3×4で組み合わせ、一つの大きな模様を構成するモデルです。エントランスロビーでは剣持デザインの家具とともにレイアウトされ、当時の京王プラザホテルを象徴する空間をつくり上げました。部分によってパイルの仕上げと毛長が異なり、シャギー、ループ、カットなど複数の技法が使い分けられています。剣持の豊かなクリエイティビティと、それを確かな技術で実現したオリエンタルカーペットの熟練した職人技が結実した作品です。
写真右 : Round Carpet[KENMOCHI-B](1971)
直径6mの円形カーペットとしてロビーの中心に設置され、来客の動線をやわらかく整える役割を果たしていました。象徴性が高く、ホテルのアイコンとして知られています。復刻版は現代の居住空間に合わせ、直径3mサイズとして展開。円形という形状は、「空間を分断せず、自然な流れを生むデザイン」という剣持の理念を体現したもので、ホテルの公共空間を、人が自然に居心地よく過ごせる場とした剣持の思想が、最もシンプルな形で表現された一枚といえます。

2025年の秋には、新たに「Calfskin Pattern Carpet」を復刻しました。
この仔牛柄のカーペットは、剣持デザイン研究所の所員のご家族であり、日本を代表するテキスタイルデザイナーである藤本經子(ふじもとつねこ)氏が手がけ、剣持デザイン事務所名義で発表された作品です。オリジナルは、繊細な濃淡の揺らぎをもつ複雑なパターンが特徴で、手織りならではの奥行きのある風合いが魅力です。復刻にあたっては、糸の番手や撚りの強さ、色の配合、毛足の高さなどを丹念に検証し、約50年前の表情を現代の技術によって忠実に再構築しました。当時の時代背景を反映したシャギーパイルの質感は、現在のインテリアとも相性がよく、柔らかな陰影と存在感をもつ一枚として仕上がっています。
この仔牛柄のカーペットは、剣持デザイン研究所の所員のご家族であり、日本を代表するテキスタイルデザイナーである藤本經子(ふじもとつねこ)氏が手がけ、剣持デザイン事務所名義で発表された作品です。オリジナルは、繊細な濃淡の揺らぎをもつ複雑なパターンが特徴で、手織りならではの奥行きのある風合いが魅力です。復刻にあたっては、糸の番手や撚りの強さ、色の配合、毛足の高さなどを丹念に検証し、約50年前の表情を現代の技術によって忠実に再構築しました。当時の時代背景を反映したシャギーパイルの質感は、現在のインテリアとも相性がよく、柔らかな陰影と存在感をもつ一枚として仕上がっています。