JOURNAL Vol.10 : ジェフリー・バワ – Kandalama Hotel, 1994
スリランカ中部、ダンブッラの石窟寺院やシーギリヤ・ロックに近い自然のなかに、ヘリタンス・カンダラマはあります。岩山と湖、深い森に囲まれたこのホテルは、ジェフリー・バワ晩年の代表作として知られています。バワの建築において、自然は単に眺めるための対象ではありませんでした。光、風、水、植物、地形、そしてそこに生きる人や動物までも含めて、ひとつの環境として建築の中に受け入れていくこと。ヘリタンス・カンダラマは、その考えがもっとも徹底された建築のひとつです。

現在のヘリタンス・カンダラマ / ©︎CASA DE
建物は、岩山とジャングルの地形に沿うように、長く水平に配置されています。平面図で見ると、中央から左右に翼を広げた鳥のような姿をしており、中央にはレセプションやレストランなどの主要機能が置かれ、その両側に客室棟が伸びています。客室やテラスは森と湖に向かって開かれ、滞在者は建物の中にいながら、常に周囲の自然と向き合うことになります。
建物は、岩山とジャングルの地形に沿うように、長く水平に配置されています。平面図で見ると、中央から左右に翼を広げた鳥のような姿をしており、中央にはレセプションやレストランなどの主要機能が置かれ、その両側に客室棟が伸びています。客室やテラスは森と湖に向かって開かれ、滞在者は建物の中にいながら、常に周囲の自然と向き合うことになります。

ヘリタンス・カンダラマの平面プラン / ©︎CASA DE
このホテルが特別なのは、建築が風景の前に立つのではなく、風景の中へと静かに入り込んでいる点にあります。コンクリートの構造体には蔦が絡まり、屋上や外壁は植物に覆われ、年月を重ねるほどに建物は森の一部のような姿へと変化していきます。室内からはカンダラマ湖と遠くの岩山を望むことができ、野生の猿がベランダや館内を行き交う光景も、この場所の日常として受け入れられています。
このホテルが特別なのは、建築が風景の前に立つのではなく、風景の中へと静かに入り込んでいる点にあります。コンクリートの構造体には蔦が絡まり、屋上や外壁は植物に覆われ、年月を重ねるほどに建物は森の一部のような姿へと変化していきます。室内からはカンダラマ湖と遠くの岩山を望むことができ、野生の猿がベランダや館内を行き交う光景も、この場所の日常として受け入れられています。

©︎CASA DE
バワは、もともとその土地にある岩や樹木、植物をむやみに取り除くことを好みませんでした。人の手によって自然を整えすぎるのではなく、そこにすでに存在しているものを読み取り、建築の側をそれに合わせていく。ヘリタンス・カンダラマでも、敷地に自生する植物や岩を避けるように計画を調整し、ときにはそれらを建築の一部として取り込んでいきました。自然を支配するのではなく、自然に従いながら空間をつくる姿勢が、この建築の細部にまで表れています。
バワは、もともとその土地にある岩や樹木、植物をむやみに取り除くことを好みませんでした。人の手によって自然を整えすぎるのではなく、そこにすでに存在しているものを読み取り、建築の側をそれに合わせていく。ヘリタンス・カンダラマでも、敷地に自生する植物や岩を避けるように計画を調整し、ときにはそれらを建築の一部として取り込んでいきました。自然を支配するのではなく、自然に従いながら空間をつくる姿勢が、この建築の細部にまで表れています。

ホテル敷地内のメインプール / ©︎CASA DE
水面の扱いにも、バワらしい風景へのまなざしが見られます。プールは湖や空の眺めと連続するように計画され、人工物の輪郭を強く感じさせることなく、視線の先へと風景が広がっていきます。現在では広く知られるインフィニティプールの考え方も、当時のスリランカにおいてはきわめて先進的なものでした。ここでの水面は、単なるリゾートの演出ではなく、建築と自然の境界を曖昧にするための重要な要素となっています。
ヘリタンス・カンダラマは、自然を眺めるためのホテルではなく、自然の中に身を置くための建築です。岩盤、森、湖、植物に覆われる外壁、水平に伸びる客室棟が一体となり、建物そのものが風景の一部として受け止められるように設計されています。そこでは、建築は完成した瞬間に終わるものではなく、植物が育ち、光が移ろい、動物が行き交い、人が滞在することで、時間とともに育っていく存在として考えられています。
水面の扱いにも、バワらしい風景へのまなざしが見られます。プールは湖や空の眺めと連続するように計画され、人工物の輪郭を強く感じさせることなく、視線の先へと風景が広がっていきます。現在では広く知られるインフィニティプールの考え方も、当時のスリランカにおいてはきわめて先進的なものでした。ここでの水面は、単なるリゾートの演出ではなく、建築と自然の境界を曖昧にするための重要な要素となっています。
ヘリタンス・カンダラマは、自然を眺めるためのホテルではなく、自然の中に身を置くための建築です。岩盤、森、湖、植物に覆われる外壁、水平に伸びる客室棟が一体となり、建物そのものが風景の一部として受け止められるように設計されています。そこでは、建築は完成した瞬間に終わるものではなく、植物が育ち、光が移ろい、動物が行き交い、人が滞在することで、時間とともに育っていく存在として考えられています。

現場に車椅子で訪れたバワ / ©︎Heritance Kandalama Resort
晩年のバワは体調を崩し、現地に自ら足を運ぶことが難しくなっていました。チャンナ・ダスワッテ氏によれば、開業後、人々や植物、動物で満たされたヘリタンス・カンダラマの写真を見たバワは、深く感動していたといいます。自分が思い描いた建築が、自然と人の営みの中で生きはじめている。その光景は、バワにとって大きな喜びであったはずです。
ヘリタンス・カンダラマにおいて、建築は強い造形として自己主張するのではなく、風景の中に少しずつ溶け込んでいきます。そこにあるのは、自然を背景として消費するリゾート建築ではなく、土地の地形や生命の気配を受け止めながら、人がその一部として過ごすための場所です。
ジェフリー・バワが生涯を通して探り続けた、建築と自然の関係。そのひとつの到達点が、このヘリタンス・カンダラマには静かに息づいています。
晩年のバワは体調を崩し、現地に自ら足を運ぶことが難しくなっていました。チャンナ・ダスワッテ氏によれば、開業後、人々や植物、動物で満たされたヘリタンス・カンダラマの写真を見たバワは、深く感動していたといいます。自分が思い描いた建築が、自然と人の営みの中で生きはじめている。その光景は、バワにとって大きな喜びであったはずです。
ヘリタンス・カンダラマにおいて、建築は強い造形として自己主張するのではなく、風景の中に少しずつ溶け込んでいきます。そこにあるのは、自然を背景として消費するリゾート建築ではなく、土地の地形や生命の気配を受け止めながら、人がその一部として過ごすための場所です。
ジェフリー・バワが生涯を通して探り続けた、建築と自然の関係。そのひとつの到達点が、このヘリタンス・カンダラマには静かに息づいています。

建設時の様子 / ©︎Heritance Kandalama Resort
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