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JOURNAL Vol.12 : 復刻 – 霞ヶ関東京會舘「プルニエ」のブラケット照明

戦後復興を経て、日本の都市が高度経済成長のなかで大きく姿を変えていった1968年、日本初の高さ100メートルを超える近代的な超高層ビルとして、霞が関ビルが竣工しました。その上層部に開業した霞ヶ関東京會舘は、都市を見渡す新しい眺望と、社交、食文化を担う象徴的な空間として計画されました。
©︎CASA DE

霞ヶ関東京會舘の設計には、建築、インテリア、設備を横断する多くの専門家が関わりました。全体の建築的な統括を芦原義信建築設計研究所が担い、インテリアには剣持デザイン研究所が参加しました。そこには、建築、インテリア、食文化をひとつの空間のなかで結びつけようとする、当時の日本における総合デザインの姿勢が表れていました。

その中心的なレストランが、東京會舘「プルニエ」です。

丸の内本館で始まったその系譜は、1968年に霞ヶ関東京會舘へも展開されました。「プルニエ」は、東京會舘の本格フランス料理、とりわけ鮮魚介料理の伝統を象徴するレストランです。初代料理長・田中徳三郎は、パリの名店「プルニエ」やホテル・リッツで修業を重ね、帰国後、その経験をもとに日本初の鮮魚介料理店として同店を開設しました。霞ヶ関の同店は、東京會舘が受け継いできた格式ある食文化を、超高層ビル時代の新しい社交空間へ移した存在でした。地上から離れた眺望、都市を見渡す開放感、そして格式ある食事の時間。そのすべてを成立させるために、空間には落ち着き、質感、光の表情が求められました。
©︎剣持デザイン研究所

剣持デザイン研究所が手がけたインテリアは、まさにそうした条件に向き合った仕事でした。超高層建築では、防火性や機能性といった新しい制約が求められる一方で、レストランには、人がゆっくりと食事をし、語らい、時間を過ごすための豊かな空気が必要とされます。

剣持勇はこのプロジェクトについて、「色を殺し、素材の質感を押えることで、眼下にきらめく街の灯の拡まりに対応する安定した重厚さを獲得しえている点が、この作品のなによりの特徴ではなかろうか」と記しています。色彩や素材を過度に主張させるのではなく、抑えることによって、かえって空間の表情を際立たせる。その考えは、超高層建築ならではの技術的な制約のなかで、落ち着きと奥行きのある食空間を生み出すための重要な手がかりでした。

そうした姿勢は、空間を構成する銅や真鍮といった金属素材へのまなざしにも見て取れます。その質感を静かに引き出していく剣持勇の考えは、このプロジェクトにおける光や陰影の扱いにも表れていると考えられます。抑制されたなかに深い表情を宿すそのインテリアのあり方は、霞ヶ関東京會舘のメインダイニングに落ち着きと奥行きをもたらしました。

また、この空間には伊藤隆道による「動く光り壁」も設けられ、光と時間の表情が加えられていました。静的な食事の場でありながら、壁面に動きと変化を取り込んだこの表現は、建築、インテリア、アート、食文化がひとつに結びついた、霞ヶ関東京會舘ならではの特別な空間性を示しています。
©︎剣持デザイン研究所

今回CASA DEでは、この霞ヶ関東京會舘「プルニエ」のためにデザインされたブラケット照明を、剣持デザイン研究所のご協力のもと復刻再生産いたしました。7月3日(金)より受注販売を開始いたします。また、同日にオープンする下北沢の期間店舗でも展示をおこないます。

このブラケット照明は、単体の装飾照明というよりも、空間全体の印象を支えていた要素のひとつです。壁面に取り付けられた光は、室内を明るく照らすためだけのものではなく、素材の質感を浮かび上がらせ、食事の場に落ち着いた陰影を与え、都市の眺望を背景に、室内に静かな奥行きをもたらしました。

復刻にあたっては、当時の図面が残されていなかったため、保管されていたオリジナル個体を手がかりに、記録写真やスケッチを参照しながら、リサーチ、採寸、製図、素材や色味の検証を重ねました。部品は可能な限り当時の姿に近づけながら、壁面への固定部の金物など、現代の使用環境に合わせるべき箇所については必要なアップデートを行っています。

制作は、多岐にわたる素材や媒体を用いた照明製作に取り組む貌製作所が担当。剣持デザイン研究所のご協力のもと、単に形を再現するのではなく、この照明が当時の空間においてどのような役割を果たしていたのか。壁面との関係、光の広がり方、素材が生む陰影など、当時の空間における佇まいをできる限り読み解くことを重視しました。
©︎CASA DE / 剣持デザイン研究所

霞ヶ関東京會舘は、すでにその姿を留めていません。しかし、このブラケット照明の復刻は、失われた空間や作品を回顧するためだけの行為ではなく、1960年代の日本において、建築、インテリア、アート、食文化が一体となって生み出した総合デザインの記憶を、現在の暮らしや建築空間へと接続する試みでもあります。剣持勇の仕事は、椅子やテーブルといった家具単体にとどまるものではなく、ホテル、レストラン、公共空間において、人がどのように座り、語らい、食事をし、時間を過ごすのか。その一連の体験を、素材、光、スケール、動線のすべてから考えることにありました。

霞ヶ関東京會舘「プルニエ」のブラケット照明には、剣持勇の空間に対する思想が、小さな光のかたちとして凝縮されています。今回の復刻再生産は、その記憶を現在へと受け渡すための取り組みでもあり、CASA DEではこの照明作品の復刻を通して、剣持勇の仕事を現代の空間へと丁寧に継承していく可能性を、今後も探ってまいります。
©︎CASA DE / 剣持デザイン研究所
左上の写真がオリジナルの個体 / 左下の写真が復刻版


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製品名 :「Bamboo Series Brass Sconce」
デザイナー : 剣持勇
デザイン年 : 1968
販売価格 ¥260,000(税込 ¥286,000)
発売開始日 : 2026年7月3日(金)

「Bamboo Series Brass Sconce」の商品詳細

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